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直腸腺癌に 直腸全層プルスルー術を行った2例

排便に時間がかかり、鮮血が混じるようになったことが主訴で来院された12歳のボーダーコリーさんです。

直腸の触診で時計方向4時~8時、奥15cmにわたり複数の腫瘤を確認しました。超音波検査、レントゲン検査で所属リンパ節、肺への遠隔転移は認められませんでした。

直腸診で腫瘤が粘膜に限局しているかを確認し、

①直腸に腫瘤があること、

②進行した場合、排便障害がおき、著しいQOLの低下を起こす可能性があること、

③現時点で肛門から直腸を引き抜いて摘出する手術の適応段階であること

を飼い主様に話し、腫瘤を直腸ごと摘出する手術をお勧めいたしました。

飼い主様は、高齢犬の為、手術室で立ち合いもとでの手術を希望されました。

直腸の全層引き抜き手術(プルスルー術)を行いました。

病理検査は直腸腺癌(脈管内浸潤+、核分裂指数10個以上)でした。肛門付近の皮膚、粘膜はしばらく荒れていましたが、しばらくしてきれいになり、排便も正常に行えるようになりました。術後、再発、転移の可能性があるので、抗がん剤治療を行っています。術後半年経過した現在、転移、再発はありません。排便もスムーズに出て、出血はほぼなくなりました。

 

 

巨大直腸と診断され、転院してきた12歳雑種のネコちゃん🐈です。

レントゲン検査で直腸は太くなっていたのが認められました。

直腸の触診で骨盤腔内に指を入れづらくしている腫瘤を多数確認しました。

ネコちゃんの直腸内腫瘤は悪性腫瘍(腺癌、リンパ腫)が多く、排便障害をおこしてしまうことが多いです。細胞診で、大型上皮系細胞が採取され、腺癌が疑え、手術が適応できる腫瘍の可能性と飼い主様にお話しいたしました。排便障害で直腸の宿便が増えて巨大直腸に陥っていますが、直腸腫瘤を直腸ごと引き抜いて手術すると排便がスムーズにできるようになることもお話しいたしました。

飼い主様は了承されたので、直腸全層プルスルー術を行いました。

病理検査結果は、直腸腺癌でした。

術後食欲が増加して、排便をスムーズに行うことが少しずつできて、1カ月後には、体重が500g増えてきました。術後10カ月経過した現在、再発なく、元気で過ごせているそうです。とてもシャイな子です。

 

獣医師本人も飼っていたネコちゃん🐈が同様の癌になって排便ができず巨大直腸に陥りましたが、同様の手術をした後、19歳で腎不全で亡くなるまでの4年間は自力で排便もできました。

手術後本人も楽に過ごしていました。ちゃー